観測隊で初、法学者が南極へ 神戸大大学院・柴田教授
 神戸大学大学院国際協力研究科の柴田明穂教授(51)=国際法、神戸市東灘区在住=が27日、日本の第58次南極地域観測隊に同行し、南極へ出発する。1956年に日本の観測事業が始まって以来、法学者の参加は初めて。柴田教授は「南極に行く国が増え、環境への負担も大きくなっている。領土権を巡る議論もある。観測事業や国際協力の在り方を考えたい」と話し、従来の調査とは異なる視点で現場に立つ。

 兵庫県尼崎市出身で京都大、同大学院などで法律を学び、2005年から現職。南極に興味を持ったきっかけは、59年に日米英などが調印した南極条約だった。この条約で南極の軍事利用が禁止され、科学的調査が進んだが、「一般的な国際法の成り立ちと違い、南極に基地を設置できる力のある国だけで条約ができたことに驚いた」という。

 南極条約について協議する国際会議で日本政府代表を務めた経験はあるが、実際に南極に行くのは今回が初めて。これまで、気候学や生物学など自然科学系に限られていた研究者の同行が、人文・社会学系も可能になったことから、自ら申し込んで採用が決まった。

 観測隊は隊員68人、同行者25人で構成。成田空港からオーストラリアを経由し、砕氷艦「しらせ」を利用して12月下旬に南極に到着する。昭和基地で過ごしながら、地質や生物調査、特別保護区の視察に同行する。来年2月まで滞在し、3月下旬に帰国予定という。

 日本の観測事業が始まり、今年は60年の節目に当たる。これまで日本はオゾンホールの発見などさまざまな成果を上げてきた。柴田教授は「各国の微妙な政治バランスの上に成り立っているのが南極観測。国際法学者が現場を知ることが、(今後の観測事業の)新たな一歩になる」と意気込む。

 滞在の成果は帰国後、学術論文として発表する。











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